―――運命というモノは、人をいかなる災難に遭わせても、
必ず一方の戸口を開けておいて、そこから救いの手を差し伸べてくれるものよ。―――――
『ドンキホーテ前編』【セルバンテス】より
人生の転換期なんて、いつあるか分からないものだ。
例えばそれはいきなり、大渦の発生している海域において、バンジージャンプで飛び込んで見せろ、と言われたとか。
例えばそれはいきなり、断崖の絶壁から底の見えない暗黒領域に、命綱一本で飛び降りて見せろ、と言われたとか。
例えばそれはいきなり、酸素ボンベもなしに海底の深くにある沈没船から、宝物を見つけて見せろ、と言われたとか。
例えばそれはいきなり、―――――――
センスの悪い看板を掲げている店の従業員(店主含み)の二人から、化け物退治をして見せろ、と言われたとか。
ちょっと言ってみれば「冗談極まりない」。はっきり言ってみれば「巫山戯んなこの野郎」。
だがしかし、そう言ってもいられない状況に置かれてしまったのは事実。
なぜ私がこんなけったいな世界に巻き込まれて、不利益ばかり被らなければならないのだろうか。
考えれば考えるほど、自分自身が憐れに思えて仕方ない。
まともな高校生活を送ろうと決心していたはずが、たった一日でそれは崩れ去ってしまった。
しかし、どこかでこの状況を楽しんでいる自分がいる、のも事実。
確かにいつまでも愚痴を言っていてもしょうがない、前向きにならなければこれから体がもたない。
とりあえず校則を軽く無視してはいるものの、バイト生活を送ることになったのだ。
時間帯も決まっているわけではなく、給料はそこそこもらえるのだから、多少満足感を覚えても良いはず。
それに例え学校関係者が【どう足掻いても】バレない自信がある。
もしバレてしまったとすれば、否、その店が【見えてしまった】時点で、その人は【この店の客】ということになるのだから。
信じようが信じまいが、すでに輪廻に食い込んでしまった私の運命。
いや、そんな言葉で片付けてしまってはならないのかもしれない。
これを運命などと言うにはあまりに陳腐過ぎる気がする。
他の言い方があるとすれば―――まるで狂った羅針盤。
針の先がどこを示すかなんて、私に分かるはずがないのだ。
ハプニング上等、魑魅魍魎奇怪現象オンパレードだろうがかかってこい。
何もかもを諦めるなんてこと、最初からしてしまっては楽しくもなんともないじゃないか。
最悪な状況から這い上がるには、そのくらいの意気込みがあったって良いだろう。
それがあっという間に尻すぼみしてしまうことがあっても、【今は】その時ではないから。
一体、この流れを誰が創ったかは知らない。
もしかすれば私はもっと別の道を歩んでいたかもしれない。
けれど無意識なる選択は、この道を選んだのだ。
後悔、をするには些か早過ぎやしないだろうか。
どうせなら開き直って楽しんでやる。
これから先に―――――どれだけ最悪の世界が広がっていようとも。
さぁ、ゲームを始めよう
存在しているモノ全てが駒≠ノなり
世界と言う広いフィールド≠ナ登場人物≠ニなる
スタート地点はバラバラ ゴール地点もバラバラ
誰か≠ェサイコロを振って動き始める壮大なゲーム
起こる出来事は駒≠サれぞれに違いがあり
誰も予想する事が出来ない
それぞれの駒≠フゴール地点は
希望≠ゥ絶望≠ゥ
黒闇≠ゥ光明≠ゥ
最高≠ゥ最悪≠ゥ
サイコロ≠振る誰か≠煢らない
誰も知ることは出来ない
さぁ、ゲーム≠始めよう
← →